鬼喰さんの岩

鬼喰さんの岩

■所在地佐賀市巨勢町
■登録ID678

昔、柳原に鬼喰さんという人が住んでいた。京に上って大相撲に入ったが直ちに先輩を抜いて大関になった。あまり出世が早いので妬まれ、毒殺を企てられた。そこで故郷に帰り農事の傍ら当時流行の宮相撲に出場していたが、いつも勝ちっ放しであった。こんなことから、勝ちっ放しのことを「オニキイさんの相撲」と言われるようになった。
ある日のこと、今日もまた相撲に出場しようと思い、秋の取り入れ時の事とて暗い中に飛び起き稲刈りに出た。ところがあまり急いだのでヤレギ(注)を鎌と間違えて、せっせと稲を刈り、東天ほのぼのと白んで初めてヤレギであったことに気付いた。その後は一株も切れなかったとの事である。
この大力士が毎日の日課に力試しをしていた力石がすなわち「鬼喰さんの岩」で、今では薮の中に、苔むして傾きかけた柳原天満宮のかたほとりに笹に埋もれて倒れている。
(注:ヤレギとは牛につける曲った棒ぎれ)

出典:巨勢P.29