新馬場通り

新馬場通り

  • 新馬場通り
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■所在地佐賀市松原3丁目
■登録ID5393

佐賀藩祖鍋島直茂を祀る松原神社は安永元年(1772)に創建されました。文化14年(1817)の松原神社の拡張に際して、鳥居に通じる通りを参道として開いたと考えられるこの参道は新馬場通りと名づけられ、昭和の中頃まで大変賑わっていました。新馬場通りには、大正時代には松本屋、荒木屋等たくさんの旅館が立ち並んでいました(「指定旅館書付」大正8年(1919)、鬼丸北川家資料、佐賀県立図書館所蔵)が、なかでも嘉永6年(1853)創業で漆喰壁の土蔵造りと表玄関に威風のある松川屋は、多くの著名人などが宿泊した老舗旅館でした。
 この旅館には明治32年(1899)に森鴎外が宿泊しています。鴎外は『小倉日記』の7月3日の記録に「朝小倉を発す。(中略)午(ひる)に近づきて佐賀に至る。新馬場松川屋に投宿し、午餐す。午後市役所に至り、壮丁を検するを見る、此地河水を飲む。夜熱く戸を閉さずして眠る。」と記し、松川屋での宿泊のほか、当時の佐賀の様子も伝えています(『鴎外全集』第21巻)。昭和32年(1957)には、映画「張り込み」の関係者が宿泊しました。平成22年(2010)に松川屋旅館は営業を止めており、現在はさまざまな活用が行われています。
 また、新馬場通りの入口、県道30号を挟んだ向かい側に明治21年(1888)に営業を始めた佐賀米穀取引所がありました。現在建物は残っていませんが、当時のものとされるレンガの塀が残っています。新馬場通りには今も井徳屋等の旅館が軒を並べ、大正時代にできた西洋風建築の松尾写真館があり、これらの建物は往時の町並みの景色を残しています。

出典:豊福英二氏(郷土史の調査研究)

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