色絵{流水文碗(台付)、瑠璃地桜花散らし文碗(台付)} 二組

  1. 旧佐賀市
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色絵{流水文碗(台付)、瑠璃地桜花散らし文碗(台付)} 二組

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■所在地佐賀市松原二丁目 鍋島報效会
■文化財指定状況佐賀県 重要文化財
■文化財指定日平成13年2月28日
■登録ID5276

安政2年(1855)に作成された『御寄附物帳』に、鍋島勝茂から菩提寺の高伝寺へ寄進されたものとして記載される「古南京染付御天目 二」「右御臺 二」に該当する作品である。
碗は二口ともに高台内を断面がアーチ状になるように削り込んでいて17世紀の茶道具の碗の高台削りに共通し、同様のものが有田の谷窯床下層から出土している。
色絵流水文碗(台付)の碗は、内面に透明釉(ゆう)を掛け、口唇部に呉須(ごす)を一周塗る。外面に染付のダミで水面をあらわし、染付の線書と金により流水文を描く。外面の地と高台内を緑に塗るが塗りむらが著しい。台は、上部に碗外面と同様の染付と色絵を施す。台の高台外側は二重圏線と波文様を染付で描く。羽の裏は透明釉を掛け、一重圏線と花唐草を染付で描き、ハリ支えの熔着痕を緑で唐草文を描いて隠している。
色絵瑠璃地花桜散らし文碗(台付)の碗は、内面と高台内に透明釉を掛け、外面は桜花を除いて濃淡二種の瑠璃(るり)釉を掛けわけている。桜花は呉須で線書して透明釉を掛け、赤と金で花弁をあらわし、花芯に緑又は黄をさす。金彩は良好な仕上がりとはいえず、色絵の技術が未完成の状態を示している。台は、上部に碗外面と同様の染付と色絵を施す。羽の裏は透明釉を掛け、ハリ支えの熔着痕に黄をさして隠し、二ないし三おきに赤の花弁を描き加えて花とし、緑で唐草文を描く。
色絵流水文碗
口径13.0センチメートル、高さ 7.6センチメートル、底径 4.7センチメートル。
色絵瑠璃地桜花散らし文碗
口径13.1センチメートル、高さ7.0センチメートル、底径 4.9センチメートル。
この2組の碗は、器形と形成の特徴が同じであり、同時期に同工房でつくられた一対のものと考えてよく、双方ともに列状のハリ支えなど、のちの鍋島焼に通じる特徴があり、とくに、瑠璃地桜花散らし文碗には、鍋島焼に多くみられる濃淡二種の瑠璃釉の掛けわけがなされている。しかし、流水文碗には、有田の初期色絵、とくに青手様式と通じる濃密な緑の地塗りがみられる。
以上のことから、この2組一対の碗は、有田御道具山から大川内鍋島焼への過渡期に位置し、大川内(おおかわち)鍋島焼の前身的な窯である有田岩谷川内の御道具山で制作されたものと推定される。双方とも色絵に金彩を使用しているが、この技法は柿右衛門文書により1650年代後半に始まったと推定されており、本作品はその開発期の作例としてきわめて貴重である。
(写真:鍋島報效会提供)