西峰院地蔵寺の地蔵堂内に安置されているこの像は、像高36.5センチメートル、台座高13センチメートルの鋳銅製の地蔵菩薩立像である。両腕は軽く屈して、左手に宝珠、右手に錫杖を執る地蔵尊像の通相であって、衲衣(のうえ)は深く垂れ、衣文の彫りは深く、黒色を呈しているが、顔面や胸の部分には金箔が施されている。
酒買い伝説や海水出現の由来伝承を伝え、「酒買い地蔵」又は「酒呑み地蔵」などと呼ばれていて、酒を供えて安産などの祈願に詣でる人が多いという。
光背を欠失し、錫杖を欠損し、台座の一部が後補となっているが、尊体は完構を保っている。小体ではあるが、極めて端正な尊像で、鋳流れや鋳崩れのあとがなくて作もすぐれ、鋳造年代は明らかでないが、鎌倉時代の鋳造様式のおもかげをとどめており、数少ない鋳銅製の仏像として注目すべき価値を有している。