権現堂の浮立

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権現堂の浮立

■所在地佐賀市巨勢町東分下
■登録ID622

権現堂にかつては玄蕃一流の浮立が伝承されていた。笛と太鼓の囃し浮立に合わせて踊る所作は民俗芸能の要素を濃厚に示している。
末次峯二家に相伝される『浮竜太鼓帳之巻』によると、「晝夜ニ限ス太鼓ヲ打ハ諸魔ヲ拂ヒ諸願ヲ成就スト」と記録され、悪魔払いの民間信仰の行事であることを物語っている。また、悪魔払いのほかに、五穀豊穣・てんぴ追い・雨乞いなどの時に、この浮立を舞うという伝承がある。
玄蕃一流の浮立を練習する時期は盆過ぎから部落の広場で夜になされていた。そして、巨勢神社の「おくんち」に12年に1回、お上り、お下りのときに浮立を舞って送迎し、奉納もしたものである。
浮立役者の役目・年齢層・行装・服装は、
1.笛…3〜4人(中老・青年)。黒足袋を履き、横笛1本を持つ。
2.大太鼓…一人(4代目の末次峯二氏に相伝されている。)わらじ・きゃはん・てんじく(天竺)を身につける。
3.大太鼓の助手…1人。ハッピ・わらじ・きゃはん・てんじくを身につける。
4.鉦……16人(30歳以上の男)。しゃぐまを被り、ハッピの黄の帯をしめ、きゃはん・わらじを身につける。
5.もりゃーあし(踊り子)…30人以上(子ども・娘)。紋付・ぞうり・花笠・小太鼓を身につける。
6.長老…二人。紋付を身につけ、お謡いをする。
7.さいりょ人(世話役)…13人。紋付を身につけ、ちょうちんを持つ。
などである。
浮立役者は権現さんの所に集まり、鉦-もりゃーあし-大太鼓-笛の順に並び道ゆきをする。そのときは、部落内の入り口のところで鉦を打つ。
巨勢神社へ奉納されるときは、「神の舞」として、てんじく(天竺)を頭に被り、「西方舞い」の「うしろ巻き」を太鼓に合わせながら、
 そもそも浮立と申するは 古のころよりも 龍神祈る かしわ手に 打って祈れば龍神も ゆるぎ出でさせ 給ひける 東西南北の悪魔を払って 白酒の露をば 授け給ふ
と、謡い終わると、直ちに笛の合図で踊る。
「神の舞」のタブーとしては、「てんじく(天竺)を頭にして、こざを祈って、昔は舞いそこなうと、ござ敷いて切腹せんばらん」とある。
末次峯二家を中心に伝承される玄蕃一流の浮立は、古くから農耕儀礼の系統が巨勢神社の降神儀式の芸能化であり神事芸能であったとみられ、民俗芸能としての価値を高めている。また、その芸能集団が権現堂の末次家を中心として存在したといえよう。

出典:巨勢P.35