西隈古墳

西隈古墳

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■所在地佐賀市金立町大字金立 佐賀市
■文化財指定状況国 史跡
■文化財指定日昭和50年6月26日
■登録ID5349

脊振山系南麓の緩やかな台地上、標高30メートル付近に位置する径約30メートル、高さ約4メートルの円墳である。墳丘は周囲を宅地や畑により削られているが、わりと残りは良く、2段に築成されている。墳丘上からは形象埴輪(けいしょうはにわ)・円筒(えんとう)埴輪の破片が採集されており、また葺石(ふきいし)帯の存在も確認されている。
本墳の内部主体は初期横穴(よこあな)式石室で、内部に横口式の家形(いえがた)石棺1基を納めている。玄室(げんしつ)は長さ3.3メートル、幅1.5メートル、高さ17メートルで、周壁は基底部に腰石を裾え、その上にやや偏平な塊石を平積みしている。玄関の外側には長さ2.8メートル、幅1.1~1.4メートルの前庭側壁が続く。使用石材はいずれも花崗岩で、玄室内には赤色顔料(せきしょくがんりょう)が塗られている。
玄室内の石棺は阿蘇山系の凝灰岩(ぎょうかいがん)製で、玄室主軸方向に設置されている。長さ2メートル、幅1.1メートル、高さ1.3メートルで、4枚の板石を組み合わせており、底石はない。玄関側小口面には一方にかたよって横口部が設けられている。棺の蓋(ふた)はカマボコ形に近い寄棟(よせむね)で、両長側辺に各2個の環状縄掛突起がある。棺身及び棺蓋の玄門側小口面にはコンパス痕を残す円文及び連続三角文を線刻し、図文以外の部分に赤色顔料を塗っている。本墳は以前に盗掘にあっており、挂甲片(けいこうへん)、鉄鏃(てつぞく)等の遺物がわずかに出土したのみであるが、石室・石棺の構造より5世紀末ごろの築造と推定され、環有明文化圏における石棺系装飾古墳の代表例として重要な位置を占めるものである。