花見

花見

■所在地佐賀市蓮池町
■登録ID339

蓮池公園の桜は見事であった。桜の馬場は、まさに花のトンネルで、オートバイサーカス、見世物小屋、射的、土産物屋が、馬場の両側にずらりと並んだ。園内には茶屋が出来、三味線の音や、人々のざわめきが夜遅くまで続いた。当時は夜になると蒲田津方面までも、その音が聞えたという。江下伍長銅像の前に、1.000燭、男山に500燭の特設電燈が明るくかがやき、踊り舞台では仁輪加や、浪花節(さいもん)が演じられ、老いも若きも心から春の1日を楽しんだものである。
現在蓮池公園は市営となり、神野公園と共に佐賀市民の憩いの場として、計画的に整備されている。戦中、戦後に荒廃した桜も、若木が植えられ、公衆便所も整備され、護岸工事も立派に出来た。交通の便もよくなり、桜の頃の人出も漸次増えて来ており、青年団の桜花の下の茶会は恒例の行事となった。つつじも、藤も再び美しい花を咲かせてくれる様になり戦後の荒廃は語り草になってしまった。しかし、宗像宮、先得亭、尚武会等、その姿を永久に消したものも多い。かって成章館に、講肄場に、文武の道に励んだ先人の姿も、今は偲ぶすべもないが、市営公園として生れ変った蓮池公園は、新しく育ちゆく桜の若木のそれの如く、新しい市民の憩いの場として、また、古い伝統の中に、何時までも蓮池人の心の故郷として、その立派な環境を保ち続けていってもらいたいものである。(昭和49年資料作成された時の状況)

出典:芙蓉P.96

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