銀木犀

銀木犀

■所在地佐賀市久保泉町大字下和泉
■登録ID2949

 県道小城・北茂安線の南400mの折地地区(下四)増田樸氏方の庭先きに根廻り2.3m目通しで二枝に分かれ、高さ10m余、樹令300年を越すといわれる名木銀木犀があった。ひひらぎ科、雌雄異株。
 夏の日差しがいくらか和らいだと思う頃、どこからともなくいい薫りが漂って来る。春は白木蓮の蕾が、秋には木犀の薫りが古里の四季を教えてくれた。誰かがこの薫りは「極楽の匂い」だよと教えてくれた。秋の彼岸前後だからか、よか人ばっかいの久保泉と言うのだろう。
 むかし、馬上のもののふがここを通るとき、いずこからともなく匂って来るこの花の香にしばし駒を止どめ、腰の矢立から筆をとり出し、すらすらと詩歌を書きとめたであろう。「駒止めの銀木犀」とは、よくも名付けた秀句たることよ。
 金木犀の花は橙黄色で、いささか強烈な薫だが、銀木犀の花は青白色に近い白色で、和らかくふくいくたる芳香を放つというべきか。
 昭和4年、名木として天然記念物に指定された頃は、伊賀屋駅を降りるとその薫に、ああ郷里へ着いたと一安心したもの。傘の形の優美な樹相も想い出される。昭和28年、県の再指定を受けた頃から、北の枝に樹勢の弱まりを感じ、専門委員の関谷・馬場先生を始め、県林業試験場・県林務課・営林署の各専門技師に来て貰い診断をお願いした。白蟻・葉ダニ・白紋パ病・一時冠水等による根群活動の変化、老令化などの意見は出たが決定には至らず、32年枯死。現在小株はあるが残念なことだった。

出典:久保泉町史跡等ガイドブックp.14〜15