野狐と祝儀帰り

野狐と祝儀帰り

■所在地佐賀市鍋島町
■登録ID2708

 うちの親父さんたちゃ、祝儀てんなんてん行たてね、嘉瀬の手前にチィチィでぇちゅうてー本橋のあんもんね。私の親父さんは嘉瀬元町からもんじゃけんが、よう祝儀とか行きよらしたて。祝儀のみやげがもう、酔ぇくろうてチィチィでぇば来よって。そうして、みやげば酔ぇくろうとっばってん、もう、わが両手にさげとった、わがおべぇちいとらす。ち、言わすわけ。
 そうして、わがもう、なんもかいも泥んごとなって、酒飲みよらしたわけ。そうしてなんたぁ、深町のその、チィチィでぇちゅうところが両方に、やぼのあって、あっこはでぇじゃもん。そして、向こうは一本橋のチィチィでぇじゃもう。そこがゆう野狐のおったところなた。
 そいぎ、そこば帰って来んば八戸村まで帰って来られん。そいぎもう、来っときなんたぁ、もう、野狐の足型のこのじばんに、いっぴゃあ、犬の足型んごたっ。そうしてなた、もう、なんでんもう、手のごいで折り結めんごたっとば結ってさげて来ないよった。もうそこからぶつっとおし切れて、手のごいばっかい持って来ないよった。

出典:鍋島町史p.309