蛇女房(異類婚姻)
蛇女房(異類婚姻)
■所在地佐賀市川副町
■登録ID2085
むかし。
ある男が、堤のところで苦しんでいる大蛇を助けたと。
ある晩、大蛇は女に化けて、ある男のところにやって来た。その女は、ある男の嫁になった。
ある日、嫁は子を生んだ。その時に覗いてはならないと、嫁から言われていたが、ある男はそれを守らなかった。ある男は、嫁の正体が大蛇であることを見破った。そのため嫁は、ある男が引き止めるのにもかかわらず、
「こいば腹の減ったときゃ、くわえさせろ」と言って、乳飲み子のために自分の片方の目玉を与えて堤へ立ち去って行った。
乳飲み子は、目玉をしゃぶっているとおとなしかった。しかし、その目玉を悪い奴から盗まれてしまった。そのため乳飲み子は泣くばかりだった。ある男は泣き続ける乳飲み子のために悩まされた。とうとうある男は、大蛇のいる堤へ行き、
「しかたなか。目ばまあいっちょくいてくんさい」と言った。大蛇はある男に、
「昼も晩もわからんけん、お寺の吊り鐘ば朝夕打ってくいろ」と言った。
ある男は、お寺の吊り鐘を打つことを約束した。大蛇は、片方の目玉をある男に与えた。ある男は、その目玉を喜んで持ち帰り乳飲み子にしゃぶらせた。すると、乳飲み子は不思議に泣きやんだ。
それからというものは、ある男は毎朝夕に寺の吊り鐘を打つようになったけな。
(新町 糸山サノ)
出典:川副町誌P.901〜P.902