むつかけ

むつかけ

■所在地佐賀市西与賀町
■登録ID158

棲息孔から出て、干潟の上にいるムツゴロウを釣りあげて捕える方法で、最も熟練を要する特殊な技法である。
つり竿は、径3cm内外で、長さ3m50cm余りの真っ直ぐな竹竿で、その細くなった竹竿の先端に長さ3m余りの麻糸を結びつけてある。その糸の先には、長さ9cm余りの細長い鉄棒が結びつけているが、その鉄棒の先端には長さ6cmの鋭い鈎が6本取り付けてある。
押板でムツゴロウが干潟上に匐遊(ふくゆう)しているのに気付かれないように静かに近づき、6m内外離れている所から竿の先に付いている鈎がムツゴロウの10cm程の先に落ちるように投げる。鈎が地面に落ちると同時に、素早く竿を手前に引き上げ、ムツゴロウを鈎にひっかけてつり上げる。
ムツゴロウは人の姿を見ると、すばやく孔に逃げるし、また、投げた鈎が手前に落ちたり、干潟の泥土に喰いこんだりすると釣れないので、非常に熟練を要する名人芸である。普通6か月位地上で練習するとか、1年間これのみ練習するとかいわれて、この技術を体得している人は少ない。

出典:西与賀の歴史とその周辺p66