和尚と小僧
和尚と小僧
■所在地佐賀市三瀬村
■登録ID1339
お寺の和尚さんの、ほんに甘酒好きじゃったて。そいで、甘酒ば大釜一杯作っとらしたぎと、小僧に飲ますったぁ惜しかもんじゃ、いつのはじゃあなっとん、小僧の知らんごと、飲んでくりゅうと思うて、すきばうがごうとったて。
そうしたぎ、ある日のこと、和尚さんが「やい、小僧。今日はない。門徒のとこから供養の使ぁのあったばい。そいけん、お経あげぎゃあ、あさんの、ちょっと行たてこんかい」て言うて、使ぁに出して、小僧のおらんうち、大丼ば持ってきて、甘酒ば一杯盛って、何処か、かごんで飲もうと思うて、思案のあげく、「雪隱ないば、滅多に誰でん来んばい」てひといごというて、和尚が雪隱にかごうで、甘酒ば飲みよったちゅう。
小僧が戻って来たぎと、和尚さんの居っちゃなかもんじゃ。和尚さんの甘酒作っとらすとば、こないだ見たけん、大抵ぇもう甘酒えなっとろう。幸いのこと。和尚がいま居らんけん。今のうち飲んでくりゅうと思うて、小僧もまた、大丼持ってきて、甘酒ば一杯ちいで、「雪隱ないば、和尚も滅多来んばい」と思うて、雪隱のところぇ行たて、戸ば開けたて。そうしたぎ。和尚さんの大丼かかえて、雪隱にかごうで、おいでじゃったもんじゃ。もう絶対絶命で、どかんしゅうもなかったけん。「和尚さん。甘酒のおかわり」ちゅて、大丼ば差しだしたて。
世の中にゃ、「隠すより現わるるもんななか」て言うちゃっけんが、そぎゃん隠いて飲んだい、すんもんじゃなかて。 そいばっきゃ。
出典:三瀬村誌p.685〜686