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[指定文化財][国][彫刻]は2件登録されています。
指定文化財 国 彫刻
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木造圓鑑禅師坐像 一躯
重要文化財
佐賀平野中央北部で嘉瀬川中流の東方春日山中腹に、春日山高城護国禅寺がある。当寺は、文永7年(1270)、久池井の地頭国分忠俊の帰依を受け、蔵山順空(ぞうざんじゅんくう)が開山した臨済宗東福寺派の寺院である。 圓鑑禅師は蔵山順空(1233~1308)の謚(おくりな)で、出生地は不明であるが、佐賀市大和町万寿寺神子栄尊(じんしえいそん)のもとで出家、栄尊に従って上洛、京都東福寺で円爾弁円(えんにべんねん)(聖一国師)に師事、鎌倉で蘭渓道隆(らんけいどうりゅう)の門に入った。弘長2年(1262)に中国へ渡り、各地で禅を学ぶ。帰国後、高城寺を開山した。のち再び京都に出て、正安2年(1300)、東福寺第6世の住持となり、延慶元年(1308)に遷化されている。 像高は85.5センチメートル。桧材による寄木造りで、内刳(うちぐ)りを施し、目は玉眼とする。表面には麻布を貼り漆下地、彩色を施す。この像は剃髪(ていはつ)し、衲衣を着けて袈裟(けさ)を懸け、両手を膝上に差伸べて払子(ほっす)を執り、膝前を垂らして曲録(きょくろく)(椅子)に座る。 頭部は肉付き豊かで、後頭部には肉のたるみを表わす。目は閉じ加減、眼窩(がんか)や口元の窪みを小さくして、穏やかな面貌を作る。体部も肩の張りや肘、膝の張出しを抑える。乱れなく衣をまとい、衣のひだは細かいひだを省いて明快な強い曲線で処理する。 こうした穏やかな雰囲気は、禅の修練を積んだ順空の悠揚(おうよう)迫らぬ人格と品格を見事に写しており、鎌倉的写実の妙を示している。 頭部の内刳から宝篋印陀羅尼(ほうきょういんだらに)と般若心経に添えられた立願文が発見され、正安2年(1300)の作であることが確認された。 鎌倉時代に隆盛した禅宗では、頂相(ちんそう)と称して、開山の像が盛んに造られ、多くの優作が残されている。この圓鑑禅師坐像もその作例の一つで、数ある肖像彫刻の中でも優れた作品である。
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木造普賢延命菩薩騎象像 康俊作 一躯
重要文化財
龍田寺(りゅうでんじ)は、元亨(げんこう)年間(1321~24)に、一地上人(いっちしょうにん)の開山になると伝える真言律宗寺院で、この木造普賢延命菩薩騎象像を本尊とする。 普賢延命菩薩は、息災延命を祈る修法(すほう)の本尊とされ、6本の牙をもつ白象上に二臂(ひ)あるいは二十臂に表現されることが多い。 本像は、4頭の白象上の蓮華(れんげ)座に結跏趺坐(けっかふざ)する二十臂の普賢延命菩薩像で、上下二重の円光背(こうはい)を負う。像高は71.7センチメートル。桧材による寄木造(よせぎづくり)で、表面に漆箔(しっぱく)を施こす。体内に内刳(ぐ)りを施し、目に水晶をはめこんで玉眼とする。頭上には金箔をはった銅製の宝冠を戴き頸(くび)飾を懸ける。 髻(もとどり)を高く結い、頬(ほお)が豊かに肉付いた丸顔で、目を切長に半眼とし、口元を締める。肩はややなで肩で、胸は膨らみを表現するために波打つ窪みを刻み、腹の膨らみは緩やかな弓状を描く線を刻んで表現する。膝は張り、厚みとも上半身に比べて小さいが、これは本像が高い台座に乗るため、下からの観賞に備えるためでもあろう。衣制は、背子(はいし)(肩掛)・条帛(じょうはく)・裳(も)を着けるが、これは厚手のものではない。衣の襞(ひだ)は写実趣味に基づきながら、細部を省いた強い曲線で表現する。 これらの特徴は、鎌倉時代末期から南北朝時代の仏像に共通する。 台座蓮肉裏の造立銘により、鎌倉時代末期の正中3年(1326)に、南都興福寺の大仏師康俊(こうしゅん)の作であったことが知られる。康俊は鎌倉時代末から南北朝時代にかけて活躍した慶派の流れをくむ正統仏師である。