マンドリンを持つ少女 百武兼行筆 一面
重要文化財
百武兼行は、天保4年(1843)佐賀藩士の家に生まれて、8歳の時から佐賀藩最後の藩主、鍋島直大の側に仕え、明治4年(1871)に直大の留学に随行して渡米、やがて英国へ渡り、明治8年(1875)にロンドンで直大の妻胤子のお相手役として油絵を学び始めた。明治11年(1878)にはパリに移り、官学派の大家レオン・ボンナに師事し、飛躍的に画技を高めた。
本作品は、明治12年(1879)にパリで描かれた作品で、明暗の色調の鮮烈な対比の中に、しっかりとした量感を持つ少女を描いている。少女の民族衣装は、ボンナのスペイン趣味の影響と考えられており、ボンナに師事した成果をよくあらわしている。
また、この作品は、百武の代表作というばかりではなく、そのすぐれた人物描写は日本洋画史上、明治12年という早い時期において画期的なものである。
明治以降、佐賀からは久米桂一郎、岡田三郎助をはじめ、優れた洋画家が多数輩出しているが、百武の作品はそれらの先駆をなすものとして高い価値を有する。