色絵椿文大皿 鍋島 二枚
色絵椿文大皿 鍋島 二枚
■所在地佐賀市松原二丁目 鍋島報效会
■文化財指定状況国 重要文化財
■文化財指定日平成30年10月31日
■登録ID5275
安政2年(1855)に作成された『御寄附物帳』に、鍋島勝茂から菩提寺の高伝寺へ寄進されたものとして記載されている「南京焼錦手大御鉢 壱ツ損物 二」に該当する作品で、2枚一対で伝来したものである。
2枚ともロクロで引き上げて成形している。口縁部は折縁にしてイゲ縁状に角をつけている。内外に呉須で文様を描き、内面のみ色絵を施している。文様は基本的に同じであるが、口縁部の花頭状の区画文様に若干の違いが見られる。素地の厚みや焼成状態にも差異が見られ、甲は素地がやや厚く十分な焼成がなされていて青味が強い。こちらの口縁部に補修があり、『御寄附物帳』にいう「壱ツ損物」にあたると考えられる。乙は素地がやや薄く焼があまくて細かい貫入が多い。法量は以下のとおり。
甲 口径39.1センチメートル、高さ9.4センチメートル、底径20.3センチメートル。
乙 口径38.7センチメートル、高さ9.7センチメートル、底径19.5センチメートル。
これらは、同時期に同工房でつくられたものと考えてよいが、見込みの椿文の表現に相違点があり、甲が有田の初期色絵に多い色絵の黒線で輪郭を引くのに対して、乙はのちの鍋島焼が特徴の第一とする染付輪郭線(骨描き)を用いる。また、双方ともに口縁部に有田の初期色絵と通じる花唐草文の表現法が見られるとともに、高く削り出した高台やハリ支えを一切使用しない点など鍋島焼につながる技法が見られる。
以上のことから、これらの作品は大川内山鍋島焼の前身的な窯である有田岩谷川内の御道具山で制作されたと推測され、肥前の色絵磁器の変遷を知る上で大変価値が高い。
(写真:鍋島報效会提供)