野狐の世間話その3

野狐の世間話その3

■所在地佐賀市西与賀町
■登録ID214

火の玉の、ほんなこて縦の1尺ぐりゃあの火の玉に私が二十歳(はたち)頃会うたことのあっですなぁ。
町遊べ、二人(ふたい)連れ、その人もまだ生きとって。二人連れ町から12時過ぎ、あすけぇ森のあっ。森から、こう、出たところが、ここが堤防で、もう今は川の中って。こいから50mばかい行ったとこれぇ、最近まではぜの木のあったたんたぁ。その楠のほんな家の所にね、北の所に山王さんのおいなっさい。その当時。
そいぎ、二人連れ、久保ちゅうて、まだ現在におらすて。ちょうど三叉路から、森の方から出て来て、三叉路になった所のにき、ホォーと、こう、よなよしさんのごたっとのくさんたぁ、まあ、頭の高さぐらいのとこれぇ、ほんにびっくいすっごたっとの、赤でんちぃたたんたぁ。
そいぎ、こっちもびっくいしてもう、かくっぎにゃあ、相手もかくぅごたんもんじゃさい、こっちもじいっと我慢したごとして、そして、その、そこのはぜの木の、こう立っとった時、下ば通らんば、まあ、ちょっと行かれんもんじゃい。ちょっと川じゃあもんじゃいなぁ。
そして、その下んにきに行たぎにゃあとは、そいが自然と、そおっと消えて、のうなったわけ。のうなったけんよかったもんの、そいから気持ちの悪さ悪さのまい、のうなってからがさい、「もう、かきゅうじゃっこうさい」て、かけじゃあたぁ。ちょっと、気持ちの悪かもんじゃいけんさい。そいぎ、城井樋まで出かけて行た。
そいぎ、そいが何じゃったかちゅうて、えぇ、何こっちゃいわからんたんたぁ。そいぎ他の者に、「こがんことのあったばい」ちて。そいぎ、「そりゃあ、あの、練兵所の野狐ちゅう。お前たちは騙されとったぁ」ち。あすこは、せっせと騙されたちゅう者の多かとよ。もう、火の消えたけんよかったばってんもう、あの川ん所はさい、ガオガオガオでもう、ないじゃいこう、馬の駆けてくっごとひょうつかすて。そいぎ、ないじゃいわからんて。

出典:西与賀の歴史とその周辺p79