蛇聟入り (異類婚姻)

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蛇聟入り (異類婚姻)

■所在地佐賀市川副町
■登録ID2084

 むかし。
 あるところの娘のところへ、蛇が美男子に化けて通って来ていたと。ところが、娘は妊娠してしまったげな。
 父親は娘に、
 「誰子か。こがん腹の太うなって」と言った。娘は父親に、
 「わからん。誰か知らん」と言った。父親は娘に、
 「そがんわからんないば、俺が針と糸で、尻じゃい、足じゃい、袖じゃい、そいばちゃんと刺しとっぎ、印のちゃーんとわかっ」と言った。
 その晩、いつものように美男子が娘のところへ通って来た。娘は、父親から忠告されたとおり、針に糸をとおし、美男子の裾にそれを刺した。
 翌朝、父親はその糸の跡をたどって行った。すると、沼の所で糸の跡は消えていた。沼の中から、
 「俺もう、がんして誰てろの腹ば太うにゃあてね、子持つ。3月3日の桃酒ば飲むぎ、お前がそがん娘の腹ゃあ入れとったっちゃ、しっきゃあ腹の子は死んでしまう」と、いう話し声が聞こえてきた。
 その話を聞いた父親は、家に大急ぎで戻って娘に桃酒を飲ませたと。すると、蛇の子が何匹も下ったげな。
 そいばあっきゃ。
              (西古賀  西村トワ)

出典:川副町誌P.900〜P.901