荒神さんとおすみ

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荒神さんとおすみ

■所在地佐賀市神野
■登録ID1912

 昔の農家にはカマヤがあって、大ガマさん、中ガマさん、小ガマさんが並んでいた。大ガマさんは、年末の餅つきの時、味噌醤油の大豆、麦を煮る時、農耕馬の大麦を煮る時等に使われ、中ガマさんと小ガマさんは必要に応じてそれぞれに用いられた。
 カマヤは、荒神様が鎮座される所として、真ん中の荒神柱に榊や柴等を供えた神棚を設け、神々のお札が安置されていた。正月には小豆を一ぱいつけた荒神さん餅(ナマコ餅)、蜜柑、干柿等が供えられた。また年何回かは、荒神盲さんといわれた盲僧が、墨染の衣に頭陀袋を下げて、大ガマさんの前に莚をしいて、手さぐりしながら御幣を切って、神事を行い読経し、家内安全を祈願し、終われば家族の心尽くしの歓待を受け、盲僧が経験した各地の面白い話を聞かせたものである。
 小学校の遠足や、どこかに遠出する時は、大人達に「おすみさん(煤のこと)を頂いたか」と言われて慌ててもどり、大ガマさんの前に行って、焚き口上についている煤を人差し指につけ、額にすりつけて飛びだしたものである。
 今は家が改築されたり、改造されたりして昔のカマヤのある家はないようだ。プロパンガスに変わった現在、大ガマさんの前で、藁や大きな木片をどんどん燃やしながら、灰の中にさつまいもを投げこみ、焼けるのを待ちながら尻をまくって、暖をとった少年時代が懐かしくてならない。       

出典:神野p168(神野小学校100周年記念誌)