旧制中学商船学校の少年ボート競漕

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旧制中学商船学校の少年ボート競漕

■所在地佐賀市諸富町
■年代近代
■登録ID1602

筑後川右岸河口の少し上流に佐野常民記念館がある。ここは大正から昭和初期まで佐賀県立商船学校があった。毎年5月27日旧海軍記念日の行事として、新北・中川副・南川副・西川副・大詫間村の小学校対抗ボート競漕が行われた。各校が小学高等科の体格の良いのを選んで1部、2部を編成して競った。選手は手のひらにいっぱい豆を作ってヨーチンを塗って練習に励んだ。当日は母校の名誉を懸けた選手の乗った5隻のボートが下流に向って、それぞれのコースの水上に並んで号砲を待つ。ボートは海軍の払い下げではなかったろうか、大きかった。8人か10人で漕いだと思う。距離ははっきり覚えていないが500m往復の1,000km競漕だったと記憶している。応援合戦も賑やかだった。先生に引率された5年・6年・高等科の生徒が右岸には新北・中川副・南川副・西川副、対岸には大詫間小学校生徒が各校の応援歌を高唱して応援合戦を繰り返し選手を励ました。号砲一発5隻のボートは一斉に流れに乗って漕ぎ出す。川はコースによって流れが違うので流れの速いコースは往路は目を見張る程早いが帰りは流れに逆らって漕ぐので往路で遅れた組に追い上げられ応援も必死に声援を送り大変な盛観であった。しかし商船学校の廃校によってこの勇壮な行事も自然消滅したのには少なからず郷愁を禁じ得ない。
新北小学校の応援歌の一節を紹介します。
「千歳川原の健男児 一粒選りの猛選手 日頃鍛えし鉄腕の 冴えるも嬉し今日の空 高鳴る血潮躍る肉 必勝期せし我が選手 勝ーて勝ーて勝て勝て 勝ーて勝ーて勝て勝て 勝ーて勝ーて勝って勝って勝って帰れ 奮え新北奮え新北(フレーニキタフレーニキタ) 奮え奮え奮え(フレーフレーフレー)」
時代が過ぎて商船学校があった事も、各校の少年が血を沸かせた華麗で勇壮なボート競漕があっていた事も現在知る人は極めて少ないと思います。
(少年時代の記憶)

出典:ワークショップ