蛙の親不孝
蛙の親不孝
■所在地佐賀市三瀬村
■登録ID1337
むかしのう。ビッキーがおって、親が「山さい行け」って言うぎ、川さい行く。「川さい行け」って言うぎ、山さい行く。何でも親の言うてぇ反対ばっかいすってっじゃん。
そいで、親ビッキーが死ぬまぎわになって思わすことにゃ、俺が死んだときゃ、山に埋けて貰りゃあたかばって、この子は反対のことばっかいすっけん、山に埋けろて言うぎと、川に埋くんにちぎゃあなかて。そいけん思うことと反対に「俺が死ぬぎと、川端に埋けてくいやい」。て言うて死なしたって。
そうしたぎと、子ビッキーは、俺ゃ、親の生きとらしたときゃ、反対ばっかいしょったけえ、せめて死なしたときなっと、親ん言うことばきかんばて思うて、親蛙の言うた通りい、川端に埋けらしたてったい。
そいで、雨の降るたんびに、親のきゃあ流りゃあすんみゃあかて思うて、世話でたまらんもんじゃ、今でも雨の降っぎい 「ギャツ・ギャツ・ギャツ」って鳴きやってったい。お前たちも、親んいうこと聞かんぎと、ビッキーのごと、ごっとい泣かんばならんばい。 そいまで。
出典:三瀬村誌p.684〜685