お茶でもござらぬリンジャーさん

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お茶でもござらぬリンジャーさん

■所在地佐賀市三瀬村
■年代近世
■登録ID1333

 藤原村柳瀬に藤原林左衛門という人がいた。この人はたいへん歯が強く、通称をリンジャーさんと呼ばれていた。
 ある日のこと、伝照寺第12代の住職得隣和尚がリンジャーさんの家の前を通りかかると、子供達が2銭ゴマ(獨楽)の鉄のケンが曲ったのを、石でたたいて真直になおそうとしていた。近くで見ていたリンジャーさんが、なおしてやるからこっちにやれと言ってそのケンを受け取り、自分の歯で難無く真直になおして子供に渡した。
 これを見た和尚が、お前さんはずいぶん歯が強いのう、と声をかけると、こんなものお茶でもござらぬ、2銭銅貨でも噛み切れますよ。と言って、大きな二銭銅貨を噛み切って見せたという。
 また、その頃、三瀬村の宿に三島屋という酒屋(正島酒屋)があったが、ある日、リンジャーさんが一杯飲もうと思ってそこに立ち寄った。酒屋の主人は、リンジャーさんが歯の強い人だと聞いていたので試めして見ようと思い、店先においてある青茶出(青色のどびん)を指差して、その昔青茶出を噛んで食べたら酒一升あげるよと、半ば冗談に賭け話をもちかけた。まさかと思ったが、リンジャーさんは早速承知して、その茶出を割り、ガリガリと噛みくだいて食べだした。最後に蓋の取手の球のところがヒョロヒョロしてどうしても噛めないので、口から出してたたき割り、また口に入れてガリガリ噛んで食べてしまったという。勿論約束通り酒一升はもらったのである。
 この話をしてくれた伝照寺の仙崖和尚は、これは実際にあった話だと付け加えた。

出典:三瀬村誌p.677