もぐら打ち

もぐら打ち

■所在地佐賀市三瀬村
■登録ID1279

正月14日に行なう子どもの行事である。
14日は小正月の前日で、14日節句あるいは14日正月ともいわれる。
モグラ打ちは小正月の当日にやる部落もある。
 先端に藁たばをしっかりくくりつけて作った竹の打ち棒を振りあげて、
 「14日のもぐら打ち、ならずの柿の木やなれとぞ祝うた。千なれ万なれ、他所の者のちぎっときゃ、川の上になぁれや、家の者のちぎっときゃ、畑の真中なあれなれ、ならずの柿の木、なぁれとぞ祝うた」。
と唱えながら、家々の屋敷のまわりを打ってまわる。打ちまわった棒は「柿の木、梨の木、ひっかけろ」といって、木の枝に折りかけておく。
 もぐら打ちをしてもらうと、その年は豊作になるという。
 家々では子どもたちにお礼の餅をあげる。いただいた餅は大きな袋に入れて、餅かつぎの子どもがかついで帰る。
終ったら1軒の仲間の家に集まり、ぜんざいを作って食べる。
 また、茶講内(近隣組)に、初正月を迎えた男の子があれば、14日の朝、各家々からモグラモチといって、長さ15㎝・幅5㎝ぐらいに切った裁餅をお盆やお膳にのせて、お祝いに持って行く。将来モグラ打ちをやってもらうので、強い子どもに育ってくれることを期待する儀礼である。
 昭和48年正月4日、中鶴部落の子どもたちが、杠 保氏指導のもとに、RKBテレビでこの行事を放映し、好評を博した。
 『神代家行事扣』にも「土龍うち」 のことが記されている。
 同14日
一 門錺等取仕迎候事
一 祗園社の花莱更候事
一 土龍のこと   
 同晩
一 ふまれな鱠 大根 魚 一汁    
一 煮物 こんぶ 魚 一力餅 一めし
一 酒
一 にしめ見合

 以上のように、この日、門餝などを取りのけて迎え、祇園杜の花菜をとりかえるとともに、もぐらうちをやることになっていた。
 そうして、夜は「ふまれな鱠」といって、畠の土中にあって踏まれても、もぐらの害さえなければ、きれいに育つ大根に、魚をきざみこんだ鱠をつくって、力餅とともに食し、こんぶと魚の煮物で酒宴を開いていて、現今のもぐらうちの源流をなしているようである。

出典:三瀬村史p633