大隈重信記念館 一棟

大隈重信記念館 一棟

  • 大隈重信記念館 一棟
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■所在地佐賀市水ケ江
■文化財指定状況国登録有形文化財 登録有形文化財
■文化財指定日平成29年6月28日
■登録ID5366

 大隈重信記念館は、佐賀城北東の旧武家地にある会所小路に面する大隈重信旧宅(国史跡)の敷地東側に北面して建つ。同記念館は、大隈侯生誕125年を記念し、昭和39年に佐賀出身の早稲田大学卒業生を中心とした建設委員会が発足して計画されたもので、同大名誉教授である今井兼次が設計を行い、地元の松尾建設が施工を請負って昭和41年(1966)11月に竣工したものである。竣工の翌年には建設委員会より佐賀市が寄贈を受けて開館し、現在まで同市による管理・運営が行われてきたもので、今年(※2017年)10月で開館50周年を迎える。
 同記念館は鉄筋コンクリート造の二階建で、建物の内外が複雑かつやわらかな曲面で構成されており、全体的にどっしりと安定した佇まいは県木である楠の根幹と大隈侯の「からだ」を表現したものである。内部は東西の柱をアーチで結ぶなど同侯の理念である東西文明の融合と調和を表し、トップライトやステンドグラスの色光で彩られる室内空間もまた同侯の精神や風格、香気を表現したものとされ、建物自体が同侯の人間像・人間愛を体現した芸術作品としての特色を有している。
 設計者である今井兼次は、後期表現派を代表する建築家としてモダニズムから距離を置き、アントニオ・ガウディやルドルフ・シュタイナーなどの建築家をいち早く評価して紹介するとともに、早稲田大学図書館(大正14年(1925))や日本二十六聖人殉教記念館(昭和37年(1962))などの優れた作品を残しており、同記念館の設計にあたっては、シュタイナーの「建築の人間化」という建築思想に影響を受け、ゲーテアヌム(スイス・バーゼル)を参考にしたものである。
 大隈重信記念館は、大隈侯の生誕125周年を記念して建設された。建物自体が同侯を顕彰する記念碑的性格を有し、早稲田大学出身の建築家、今井兼次による建築理念をコンクリートによるやわらかな曲面で表現したもので、地元職人の施工技術の高さが窺えるなど、生家である茅葺の旧宅とともに日本の近代化に貢献した大隈侯の足跡に触れることのできる建物として価値を有するものである。

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