七兵衛と八兵衛

七兵衛と八兵衛

■所在地佐賀市富士町大字上合瀬
■登録ID2894

 むかし、むかし。
 上合瀬に七兵衛、下合瀬に八兵衛て言う知恵の働く人のおんさったて。
 ある日、天気のあんまい良かもんじゃ、散歩しょんさったぎ、二人が道でばったい出合いんさったて。そして、八兵衛さんの
 「何じゃいおもしろい話はなかかい」
て聞きんきったぎ、七兵衛さんの
 「家の裏に、たぬきの住んどっさい、その頭の上、カラスの巣ば作っとっばい」て言いんさったもんじゃ
 「七兵衛、なんてしゃんか事のあっもんか」
 「そんないば八兵衛、家の裏さん見や来てんの」
 「ようし、そんない見やきゅうだい、ほんなごて、たぬきの頭に、カラスの巣ば作っとっない馬八匹あさんにやろうだい」て言うて、二人で、七兵衛さんの家の裏さん行きんさったて。
 そして、七兵衛さんの
 「ほら、八兵衛、あそこば見てんの」と、指ばさしんさった所は、すっぱい田ん中で、田ん中の脇に、木の一本立っとって、その上ば、カラスの飛びよったて。そいもんじゃ、八兵衛さんの
 「どけえ、たぬきの頭に、カラスの巣ば作っとっか。たぬきでんおらんやっか」
て言いんさったぎ、七兵衛さんの
 「いう見てみい、あすけえ木のあろうが、木の上にカラスの巣ば作っとろが、田の木の頭に、カラスの巣ば作っとっけんが、たぬき(田の木)の頭にカラスの巣ば作っとって言うたろうが」て言いんさったもんじゃ、八兵衛さんな
 「ええくそ、七兵衛にやられたばい。馬八匹持って来っけんが、待っとかい」て言うて、別れんさったて。
 そして、八兵衛さんは
 「ああはがいさ、馬八匹もやらるっもんか。」と、やせこけた馬に鉢ば八つ引かせて、七兵衛さんの家さい行たて、
 「七兵衛おっか、馬八匹持って来たけんが受け取ってくれんかい。」て言いんさったぎ、七兵衛さんの、
 「そりゃあ、すまんない、馬八匹もただで貰うて。」て言いながら出て来たいば、馬は一頭しかおらんもんじゃ、
 「八兵衛、馬は一頭しかおらんやっか」て言うて腹かきんさったて。そいぎ、
 「なんちいよっか、おりゃあ、馬八頭てん言うとらん。馬八匹て言うたろうが、馬に鉢ば八つ引かせて持って来たけん、馬八匹(鉢引)やろが。」て八兵衛さんの言いんさったて。(合瀬 合瀬秀雄)

出典:富士町史p.618〜p.620